家族経営、企業経営のポイントや課題を伝授

今後の戦略などテーマに第2回養豚塾開かれる
 


 12月2日、3日の2日間、東京・高田馬場のバリュー貸会議室において、農場長の役割などをテーマに2011年第2回(通算132回)養豚塾(山下哲生塾頭)が開かれ、全国の若手養豚生産者の方々25名が参加されました。

 最初に養豚塾塾頭の山下塾頭が、日本の養豚生産の現状とともに海外の養豚生産動向について説明し、イギリスやアイルランドではすでに去勢が全面禁止されており、EU全体でも2018年以降は去勢が完全に禁止されることや、未去勢豚と去勢の発育の違いなどを解説。さらに口蹄疫で甚大な被害を受けた韓国の家畜伝染病予防法の改正の概況や、現場での実際の防疫管理の様子を動画を使い解説した。さらに今回は受講生として参加していた韓国の養豚コンサルタント、安基洪氏にも特別に韓国養豚産業の現状について報告していただきました。
 
 続いて、JAでの経営指導から畜産簿記の手法を生み出し、現場目線で長年にわたり学生を指導してきた東京農業大学名誉教授の新井肇先生を囲み、家族(養豚)経営と企業経営の違いなどについて新井先生の講義を聴講した後、参加者との質疑応答が行われました。講義の中で新井先生は、家族経営の欠点として、生活が営農の犠牲になっていること、「家」が優先して「個」が確立していないことなどを挙げ、経営と家計の分離、家族労働の評価、家族員の役割の決定などの課題を説明。その上で、近代的家族経営に転嫁する必要性を強調し、経営者の意識の向上が求められていることなどを示唆されました。

 その後、群馬県赤木町で母豚170頭の一貫経営を行う泣sックニクの代表取締役の都丸明浩さんが、自らの養豚経営における飼養管理や衛生管理などについて講演。経営分析や同じモチベーションを持った人たちと切磋琢磨することの重要性などを強調しつつ、奥さんのモチベーションを高めることなどを目的に、近隣4軒の養豚家が集まり奥さん同士の情報交換や慰安を行うような活動を続けていることなどを紹介してくださいました。

 初日のセミナー修了後は、養豚塾恒例の銘柄豚肉と豚ホルモンを食べながらの交流会が開かれ、今回は「白金豚」(岩手県)、「やごろう豚OX」(鹿児島県)、そして山下塾頭が生産する英国純粋黒豚(BB)の3種類の銘柄豚肉の食べ比べも行われ大いに盛り上がりました。

 2日目は、種子島出身で現在、団体役員の古市良洋氏が、「豚の世話がいやだったので東京に出てきた」と題して講演。種子島で農家養豚を幼い頃から高校まで手伝い、その経験をユーモアをたっぷりに語ってくださいました。
 
父親から受け継いだ経営を発展させ、数々の新技術を導入し、現在母豚1200頭の一貫経営を行い、高い繁殖・肥育成績を収めている青森県つがる市の竃リ村牧場代表取締役の木村洋文さんは、企業養豚のポイントと今後の戦略について講演。生産概況や雇用問題、今後の戦略などについて説明してくださいました。そして2日目最後の講演では山下氏が、農場長の役割とストックマンシップについて解説しました。

 なお、今回の養豚塾の詳細内容につきましては、月刊養豚情報2012年1月号に木村洋文さんの講演概要を特集記事の一つとして紹介させていただき、その他の講演内容や参加者と講演者によるディスカッションの様子は2月にて紹介させていただく予定です。



▲今回は若手養豚生産者の方々ら25名が参加されました



▲山下哲生塾頭



▲東京農業大学名誉教授の新井肇先生



▲新井肇先生を囲んで家族経営などについてディスカッション



▲泣sックニクの都丸明浩さん


▲韓国の養豚コンサルタント、安基洪さん


▲ 古市良洋さん



▲竃リ村牧場の木村洋文さん