養豚塾2012年第1回講座開講(平成24年12月7日〜8日)にあたって




養豚塾ニュース 経営編

<世界標準?が、小規模生産者を淘汰する>

 「世界」に追いつく、「世界に加わる」「世界を追い抜く」世界という言葉は、魅力的なイメージをふりまいてきました。これを後押ししたのは、世界貿易の拡大と、インターネットに代表される情報の国の境を越えた発達。そしてアメリカの世界戦略=自国に有利となる輸出品=余剰農産物や情報器機、ソフト の洪水のような輸出です。

 世界標準は、とりもなおさず、システム化、情報化、そして選択と集中の名のもとに集められた資金力の差が背景として語られてきました。

 養豚産業においては、特に規模拡大を行い飼養管理を分業化しかつ標準化することで、作業者1名あたりの、生産性は拡大し、かつ衛生面でもオールインオールアウトを基調とする群(ロット)管理で事故率は、大幅に改善されました。

 この傾向は、日本のみならず特にアメリカでドラスチックに展開し、多くの独立自営の養豚家が、経営を廃止したり、あるいは、大手の養豚生産企業の傘下に入るかして、その数を大幅にへらしています。生産の主力は、トップの企業養豚5社で170万頭(30%)、さらにトップ25生産者で290万頭(50%)の母豚数となっています。

 従来の農家で家族養豚を行う独立の自営生産者は、インデペンデント(気高い自営農民)と呼ばれていたが、時代の波に「翻弄され」消滅の危機に直面しています。日本でも最新統計では、養豚農場数は、6000を切れています。

 この「世界標準」がもたらしたものは、「貧富の差の拡大」で富めるものは、ますます富み、貧しいものは、ますます、生活が苦しくなるという構造でした。この構造が、社会にもたらすものは、決して良い結果をうまないと考えます。歴史で見ても、かつて世界に君臨したローマ帝国が、その基礎となった自営農民による農業から、属州、植民地での大規模農業に軸足が移るにしたがい衰退したのと同じ轍(ワダチ、てつ)を踏むことになります。

 短いコラムで、この問題を論ずるには、あまりにも、荷が重いものです。ここでいえる 小規模零細でも経営を続けるには、次のような点ではないでしょうか。
  
@ 仕事に対する動機づけ養豚が好きでありつづけること 「養豚塾は、絶好の場」
A 生産技術の原理原則、基礎を学び 情報を積極的に手に入れること
B 付加価値の高い売り方を考え 捜す=販売単価のアップ

 a) 生産する豚肉を理解し、少しでも良い値段で買ってくれる流通業者とジョイントすると同時に、自らの眼のまわる範囲で、直売先を探す
 b) 品種交配方法、餌へのこだわり、出荷技術などで、原理原則に立った上で特色ある豚肉をつくる。
 c) 仕事の構成を検討し、堆肥生産 液肥生産を生かした、販売を検討したうえで野菜、稲作、根菜などの生産を検討して見ること            



養豚塾ニュース 技術編


<無薬養豚で生産される豚肉は、美味しいか?>

 日本では、今回の養豚塾でのスピーカーとして無薬養豚(養豚のすべての段階から抗菌、抗生物質を抜く、最低限のワクチンは使用 薬剤治療した豚は、無薬のラインから外す)について話していただく江原養豚さんは、10年ほど前からこの取り組みを始めています。

 江原さんをはじめ、日本で無薬養豚を行っている生産農家は4農家と聞いています。一方このアイデアーを使い生産している韓国の農場は100を超えているそうです。韓国では、大統領自ら試食し、その美味しさを絶賛したということもあり付加価値を付けた有利販売がなされているそうです。

 無薬豚は、美味しいというのが韓国では定着しているようです。無薬豚と通常の休薬期間を守った豚との違いは、腸内の、細菌叢(腸内の細菌バランス)中に、抗菌抗生物質由来のものがないため、美味しくなるといわれています。

 これは、黒豚と並び、評価を得ている SPF 豚 がその健康状態の良さ=薬剤費出荷豚1頭当たり1000円以下 で肉が美味しくなるという説明をしている面から類推されます。今回の養豚塾では、実際に試食し、またその原理原則を聞くことができます。そして、この無薬養豚への取り組みが、決して思い付きからでたものではなく、日清丸紅飼料の矢原先生の指導、並びに餌の供給があったことを忘れてはなりません。この点もじっくり聞けます。

<肉質を考えた出荷体重は122kg以内、そして産歴は古くなりすぎないように>

 野菜、果物には、出荷適期がありますが、豚には、あまりこの議論がなかったようです。今回のスピーカー 潟Vムコの木全さんは埼玉種畜牧場で肉質の研究に打ち込み、素晴らしい仕事で2001年から2002年にかけて、「現場で考える肉質改善」というテーマーで1年間「養豚界」誌に連載を行い、技術面で大きなインパクトをあたえてくれました。

 美味しい豚肉とは、肉色の変え方、サシの入る原理原則、雄豚の影響。雌豚の影響 出荷時期と肉質など、即現場で応用できる話題が満載です。10年ほど前のものですが、今でも輝くものが多数あります。その中で特に今でも使えるのは次の点です。

@ サシが入るのは、デュロック系であるが系統の差が大きい。脂肪との関係で去勢にでやすい
A 「しまり」の改善は、脂肪の改善で良質の脂肪を創る努力が必要
B 去勢は、190日令以前に出荷することで(生体122kg以下)肉質改善
C 高産歴の母豚から生まれた肉豚群の肉質は、悪化する傾向が有る

今回この木全さんの「現場で考える肉質改善1〜12」を配布する準備もしています。