里子基準

ピッグスペシャリスト 山下哲生  提案    2006年9月

里子を行う際には、まず、次のような原則が必要です。

1 初乳を理解する。

2 常乳を理解する。

3 初産豚と経産豚も違うものと理解する。

4 豚の行動、心理を理解する。

<初乳>

分娩担当者が、一番 力を注がなければいけないのは、いかに 子豚に初乳をしっかりのませるかということです。

初乳は

@ 分娩後24時間しか出ません

@ 生まれた子豚が初乳を初乳として吸収できるのも、せいぜい、24時間です。

このことから、理解しなければいけないこと

      例えば、生まれて3日以上の子豚に、初乳を吸乳させようとしても無駄である

      いかに 初乳を飲ませるかの工夫が大切

その限りで、分割授乳は、非常に効果的である。

分割授乳は、生まれてから、24時間以内にしっかり初乳を飲ませる手法で

まず、生まれた仔豚を大小で、2グループに分ける。このグループは、生まれた数の半分が、1グループと考えればよい。

まず、大きい豚のグループを、母豚から隔離、1時間から1時間30分程度、小さい子豚のグループに、初乳を飲ませる。この時間が終わったら、大きい豚と一緒に飲ませる。これを、朝夕 或いは、夕朝の2回行えれば、完璧

<常乳を理解する>

常乳は、

@ ほぼ1時間ごとに1回当り50CCほど、泌乳されるようになります。

@ 泌乳時間は、1分30秒程度です。その後は、1時間ほどたたないと、泌乳しません。

@ この、乳を出す時に独特の鳴き声を出して仔豚を呼びます。

@ 常乳には、初乳ほどではないですが、免疫抗体が、入っています。したがって、普通の餌を食べるよりは、病気に対する免疫力は付くようです。

このように、理解をすすめれば、つぎのようになります。

       里子のタイミングは、泌乳時にある。

       泌乳時以外に仔豚をつけても、母豚を神経質にするだけで、あまり効果が無い。

       常乳は、食べた餌の量に、比例して、泌乳される。

       吸乳直後は、仔豚を里子に出さない。

<初産と経産豚は、違うものと理解する>

初産豚は、異なった豚と理解する必要があります。

@ 初産豚は、体が造られつつある過程のものです。泌乳量もぐっと落ちます。

@ 初産のときに、過剰な負担を母豚にかけるとその後の繁殖成績にも、悪影響を及ぼします。

@ 一般に神経質で、子豚に対する攻撃、ひどい場合は、噛み殺しをともなうこともある。

これらの点からかんがえられることは、

       初産豚には、9頭 最大でも10頭以上の子豚は、つけない

       付ける子豚は、体の大きいものにする。

これは、乳器を思いっきり刺激させることで、2産目以降の泌乳量を多くさせるためである。

       授乳中の初産豚に関しては、餌の給餌量を少なめに、しかし、回数を増やして、総給与量は、十分になるように、導く。

* 興奮させないように、驚かさないようにする

<豚の行動、心理を理解する>

豚は、非常に頭のいい、また、その感覚も鋭い生き物です。

@ お腹が、いっぱいになると、母豚は、泌乳がしたくなる。

@ 嗅覚が、発達しており、臭いで仔豚を識別しようとする

@ 静かな環境を好み、人間の存在は、ストレスを増加させる

里子のポイントは、

       里子された子豚は、する側の子豚と少なくとも30分程度は、一緒にしてその臭いを

均質化するのがよい。

       静かな環境、例えば、夕方など、餌を給与し母豚が、それを食べて、横になったときを見計らい、子豚に乳をつけてやるようにする。


里子の実践

1 まず、初乳を必ず飲ませる。

(分娩直後の母豚死亡の可能性があるなら、初乳を絞り凍結させておくと良い)

2 下痢などの、病気の子豚は、里子からはずす。

3 初産豚には、大きめの子豚を9頭最大でも10頭以内に

4 里子は、分娩後3日以内にするようにする。

5 2産から5産までが、泌乳のピークなので、これ等の豚には、12頭までつけてもよい。また、餌は食べたいだけたべさせる。

6 7日以上たってミルクを飲めなかったり、体調をくずして、ひねかかっている子豚は、

まとめて、離乳と同時に廃用する予定の母豚を里親として活用しまとめてつける。

7 過去の成績は、里子をする際の最大の参考資料となる。