情報力から現場力へ

〜ピッグジャパン コラム復活への決意〜



 コラム「答えは現場にある」を訪れてくださる皆さん、長い間の空白をお許しください。正直、自ら情報を発信しようとする気力が、ここしばらく、まったく湧かなかったからです。

 養豚業界は、システム化、巨大化、ハイブリット化、海外発の「情報化」という中で、情報発信することに、ためらいがありました。主流から離れ、遠吠えのように、「泥臭い」報告をしても、空しい感じがしていたからです。

 昔、多くの中小、零細農家があったとき、新聞、雑誌、ミニコミなど、いろいろなところに、「現場からの創意工夫、新技術、飼養方法へのチャレンジ」が発表されて、にぎやかなものでした。たとえば、「なでなで養豚」といって、妊娠豚のお腹を、分娩近くから定期的にさすってやると昼間に分娩するというようなものです。このような記事は、家族経営で、母豚管理をする「お母さんたちに」人気がありました。

 母豚は、その6割くらいが早朝に分娩するといわれています。理由は、たぶん人に邪魔されないときに静かに生みたいという要求があるのではと、説明されています。
 しかし、飼う人が、母豚と十分コミュニケーションがとれ、母豚がお産のときに「人に」いてもらいたいと思うから「昼間生む」との説です。私が、経験したイギリスのバークシャー(英国黒豚)の農場では、夕方の基本作業として雄豚のブラシがけが行われていました。これを、「ブラッシング」といいます。こうすることで、豚の調子も良くなり、人に馴れるというのが、彼らの主張でした。

 それでどうかというと、確かに、生まれる子豚の数は、眼を見張るものがありました。
システム化された養豚では、このような事例は、「趣味」のよういきかもしれません。しかし、そのような、これまで、効率のもとに無視されてきたようなものが、意外と役に立ち有効に働くのではと、思いはじめました。

 今回の福島原発問題、宮崎、韓国での「口蹄疫」。効率化、システム化、巨大化の中で、見落としてきたものが多かったのではと考えました。

 養豚場で問題なのは、現場での問題の発見とそれに対する対処力が、効率化の中で相対的に落ちてきていることだと思わざるを得ませんでした。「答えは現場にある」。このスローガンのもと、現場力の再生を願い、コラムを再開させてもらおうと思います。