迷ったら原点に返ろう! ストップ・ザ・豚コレラ!

 昨年9月からの豚コレラ発生による殺処分も4万頭を超えました。この状況の中、身近に迫った危機から豚コレラ緊急ワクチンの実施を求める動きがでてきています。しかし、1995年から生産者主導で始まった「豚コレラワクチン中止=撲滅体制確立事業」を思い出しましょう。日本養豚協会に送った投稿を、ホームページに掲載させていただきます。


【投稿】

 一般社団法人日本養豚協会(JPPA)執行部、及び事務局の皆様におかれては、今回の26年ぶりの豚コレラ発生で日々御尽力、その防圧に向け全力を傾けられていることと拝察いたします。

 さて、最近配信されたJPPA通信242号、243号において、香川JPPA会長を筆頭に、JPPAとして、豚コレラ緊急ワクチン接種を要望するかのような、配信が行われています。
 豚コレラの清浄化事業については、JPPAの母体となった、養豚協会、養豚経営者会議を主体にし、生産者の運動で2006年のワクチンの全国中止、2007年の豚コレラ清浄国への認定がなされたと思います。特に、ワクチンの中止に関しては、生産者間の激しい議論の末に、ワクチンを使わない淘汰方式で清浄化を維持することが確認されたと考えています。

 私個人としても、JPPAから初の表彰であったと思いますが、2008年(平成20年)1月に豚コレラ清浄化=撲滅推進事業への貢献で賞状をいただいています。

 豚コレラ撲滅事業については、その過程の議論でより生産者にとって、より経営を安定させ確信を持って経営維持できる周辺対策も充実されました。淘汰に対する助成金、特別助成金導入、経営再開に対する特別互助基金、その他の各種助成処置で、殺処分淘汰でも経営の再建は容易になる制度設計がなされてきたと思います。これは、防疫の基本である「通報」を躊躇することなく行える体制を作ることにあり、撲滅体制の根幹をなすものです。

 しかるに、ワクチンを打てば、拡大しないという昔のワクチン神話=保険の論理で発生県とその周辺でワクチン接種要請を県の養豚協会単位で行っているのは、疑問に感じます。
 まず、防疫の強化と通報が重要で、後からの調査で、「おかしいと感じてはいた」、あるいは車両消毒の不徹底等、我々生産者にも責任ある問題点が出てきています。

 豚コレラのワクチンの世界に類を見ない効力は、ワクチンを使わなくても良い防疫体制を作るために開発されてきました。また、全頭注射、それを確実にするためのワクチン配布と獣医師が打つと枠組み、100%接種への労力は大変なものであったと記憶しています。これにより、国内の豚コレラウイルスによる発症は1994年以来無かったのです。

 「ワクチン」は、すべてを覆い隠すといいます。ワクチン=安心という論理では近隣で莫大な被害またをもたらすアフリカ豚コレラ、また口蹄疫には対抗できません。
 さらに、豚コレラワクチンの接種豚を市場に出すことは、国産豚肉のせっかく維持してきたステータスを壊し、清浄国である欧米、カナダなどからの輸入豚肉を増加させるばかりか、かつて国内豚肉の強力なライバルであった韓国、台湾からの輸入再開への道もひらかれます。

 今一度、状況をしっかりふまえ、JPPAとして、現在の豚コレラワクチン無しの体制を継続することを強く要請いたします。また、この問題に対する生産者の意見集約を要望いたします。

JPPA会員 長野県養豚協会会員
元 豚コレラ清浄化実行委員会 事務局
山下哲生
携帯 090‐3138-0947
2019年2月24日




▲ 長野・信州BBファームでも石灰帯を作り、車両消毒を実施しています。雪は消えています。2019年2月24日